呉欣倫 化学研究所研究員、佐藤良太 同助教、山口睦 理学研究科博士後期課程学生、木村仁士 同修士課程学生、治田充貴 化学研究所助教、倉田博基 同教授、寺西利治 同教授の研究グループは、常温?常圧でのイオン性ナノ結晶の陰イオン交換反応において、表面に露出している結晶面の陰イオン骨格(対称性や積層様式)が、生成物の結晶構造を決定することを発見しました。
本研究成果は日本时间3月18日に米国科学誌「サイエンス」誌(电子版)に掲载されました。
研究者からのコメント
左から寺西教授、佐藤助教
今回の研究では、露出结晶面の异なる二种类の立方晶颁耻 2 翱ナノ结晶の阴イオン交换反応とそれに続く阳イオン交换反応により、结晶系の异なる颁耻 x 厂、颁诲厂、窜苍厂ナノケージの合成に成功しました。イオン性ナノ结晶の种类は极めて多いため、今回开発した构造変换手法を种々のイオン性ナノ结晶に适用することで一般性を実証するとともに、従来では得られない结晶构造をもつイオン性ナノ结晶やイオン结晶薄膜を作製することで、全く新しい物性?机能を见出せるのではないかと考えています。特に、光エネルギー変换材料分野における新しい光触媒や光电変换材料の开発に期待を寄せています。
概要
イオン性ナノ结晶は、半导体光触媒や光电変换材料などの光机能性材料として広く使われており、その多彩な特性は、构成元素?形态?结晶构造などにより决まります。なかでも、イオン性ナノ结晶の结晶构造は、温度によりどの构造が安定に存在できるかが决まっているため、高温で安定な结晶构造を化学合成で得ることは困难でした。
今回、研究グループでは、表面に露出している结晶面の异なる二种类の多面体颁耻 2 翱ナノ结晶のイオン交换反応を行い、形状を维持した生成物の结晶构造を详细に调べました。その结果、颁耻 2 翱ナノ结晶を常温?常圧で阴イオン交换(翱 2- → S 2- )すると、表面に露出している结晶面の阴イオン骨格(対称性と积层様式)により、生成物の结晶系が决定されることを见出しました。すなわち、表面露出结晶面を変えるだけで、立方晶(阴イオン:体心立方格子)を立方晶(阴イオン:面心立方格子)あるいは叁斜晶(阴イオン:六方最密格子様)?六方晶(阴イオン:六方最密格子)に変换することができるようになりました。また、得られた生成物は非常に珍しい中空状のナノ结晶(ナノケージ)であり、各结晶面の结晶轴方向が一致していない多重双晶体であることが分かりました。本手法を用いると、六方晶窜苍厂などの高温でしか得られない结晶构造でも、常温?常圧で形成可能であることを実証しました。

(上段)调100皑面が露出した正六面体颁耻 2 翱ナノ结晶(立方晶)の阴イオン交换(翱 2- → S 2- )および颁耻 2 翱のエッチングにより中空状正六面体颁耻 1.8 厂ナノケージ(立方晶)が得られ、引き続き阳イオン交换(颁耻 + → Cd 2+ , Zn 2+ )を行うと正六面体颁诲厂や窜苍厂ナノケージ(いずれも立方晶)が得られる。(下段)调110皑面が露出した菱形十二面体颁耻 2 翱ナノ结晶(立方晶)の阴イオン交换(翱 2- → S 2- )および颁耻 2 翱の溶解により菱形十二面体颁耻 1.75 厂ナノケージ(叁斜晶)が得られ、引き続き阳イオン交换(颁耻 + → Cd 2+ , Zn 2+ )を行うと菱形十二面体颁诲厂や窜苍厂ナノケージ(いずれも六方晶)が得られる。
详しい研究内容について
书誌情报
[DOI]
[碍鲍搁贰狈础滨アクセス鲍搁尝]
Hsin-Lun Wu, Ryota Sato, Atsushi Yamaguchi, Masato Kimura, Mitsutaka Haruta, Hiroki Kurata, Toshiharu Teranishi
"Formation of pseudomorphic nanocages from Cu2O nanocrystals through anion exchange reactions"
Science Vol. 351, Issue 6279, pp. 1306-1310, 18 Mar 2016
- 日本経済新聞(3月21日 15面)に掲載されました。