神戸大朋 生命科学研究科准教授、Erinn Sim Zixuan 東京工業大学大学院生(研究当時)、榎本孝幸 同研究員、白木伸明 同准教授、粂昭苑 同教授らの研究グループは、東京大学、熊本大学、味の素株式会社などと共同で、ヒト多能性幹細胞の未分化性維持にメチオニン代謝と亜鉛が寄与することを明らかにし、それぞれの除去培地を組み合わせて利用する新たな膵臓β細胞への分化誘導方法を開発しました。
ヒト多能性干细胞からの膵臓β细胞の分化诱导では、细胞株ごとに分化诱导効率が异なるという问题があります。本研究グループはこれまでの研究で、多能性干细胞の未分化性の维持や分化诱导に、メチオニンやその代谢物が重要であることを明らかにしてきました。
本研究では、干细胞の分化制御におけるメチオニン代谢の下流シグナルを明らかにするため、网罗的遗伝子発现解析を行いました。その结果、メチオニン欠乏によって亜铅排出トランスポーター厂尝颁30础1が有意に増加しました。そこで细胞内亜铅浓度を测定した结果、5时间のメチオニン欠乏で干细胞内のタンパク质结合型亜铅が有意に减少しました。この亜铅浓度低下には、メチオニン代谢物であるホモシステインが寄与することもわかりました。次に、味の素株式会社と共同で新たに开発した亜铅除去培地で干细胞を数日间培养して、亜铅含量低下を再现したところ、メチオニン欠乏によって引き起こされる现象の一部(増殖抑制?メチオニン代谢変动?分化状态移行)を模倣することを确认しました。これらの结果から、メチオニン欠乏は、干细胞内の亜铅含有量を低下させることにより、细胞分化を促すと结论づけました。
さらに、开発した亜铅除去培地を用いて、复数の多能性干细胞を効率的に内胚叶へ分化させることに成功しました。最终的にはメチオニン欠乏と亜铅欠乏を组み合わせることで、多能性干细胞から机能的な膵臓β细胞を分化诱导する新规培养方法を确立しました。
本研究成果は、多能性干细胞の未分化性维持や分化におけるアミノ酸とミネラルの関连性を世界で初めて明らかにし、培养液中の栄养因子が细胞分化に重要な役割を果たすことを示すものです。今后、これらの栄养因子が细胞分化に与える影响を详细に把握することは、再生医疗や创薬研究に利用可能な细胞製造に有益です。
本研究成果は、2022年7月19日に、「Cell Reports」に掲載されました。

叠)メチオニン除去培地で5时间培养した场合。ホモシステイン排出阻害、タンパク质结合型亜铅(窜苍)の低下、厂尝颁30础1発现増加が引き起こされ、细胞は分化倾向へ推移する。
颁)ホモシステインは细胞内のタンパク质结合型亜铅浓度を低下させる。
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【书誌情报】
Erinn Zixuan Sim, Takayuki Enomoto, Nobuaki Shiraki, Nao Furuta, Soshiro Kashio, Taiho Kambe, Tomonori Tsuyama, Akihiro Arakawa, Hiroki Ozawa, Mizuho Yokoyama, Masayuki Miura, Shoen Kume (2022). Methionine metabolism regulates pluripotent stem cell pluripotency and differentiation through zinc mobilization. Cell Reports, 40(3):111120.