血管収缩因子エンドセリンの受容体初期活性化机构を解明

ターゲット
公开日

土井知子 理学研究科准教授、東京大学、名古屋大学らの研究グループは、血液循環において局所的な血流の調節を行っている血管収縮因子エンドセリンが細胞膜にあるエンドセリンB型受容体に結合している複合体の構造と、何も結合していない状態のエンドセリンB型受容体の構造を原子レベルで解明しました。この成果は、受容体の構造情報に基づいた高血圧症やがん、アルツハイマー病などに作用する副作用の少ない新たな薬剤の開発に資する成果です。

また、本研究成果は2016年9月6日午前0時に英国科学雑誌Nature のオンライン速報版で公開されました。

研究者からのコメント

土井准教授、谷一寿 名古屋大学特任教授、志甫谷渉 同博士課程学生

本研究では、構造を変化させて細胞外の情報を細胞内に伝えるGタンパク質共役 型受容体について、その構造変化の一部分を解明することができました。阻害剤結合 型や完全活性型構造についても研究して、受容体タンパク質の構造変化の全容を理解 したいと考えています。解明できた構造情報に基づいて、選択的に受容体を活性化あ るいは阻害できる小分子リガンド化合物を設計することは、副作用の少ない有効な新 規薬剤の開発を促進します。

本研究成果のポイント

  • 血管収缩因子エンドセリンと结合した受容体の构造を解明
  • この受容体がエンドセリンと结合していない状态の构造も解明
  • これらの立体构造を基盘とする新たな薬剤の开発が期待される。

概要

ヒトはおよそ60兆个の细胞で构成され、细胞间の情报交换と协调によって正常な生命活动を维持することができます。细胞表面の细胞膜では、细胞外からのさまざまなシグナルを受け取り、各情报を细胞内へ伝えるために受容体タンパク质が働いており、创薬ターゲットとして重要视されています。细胞膜にある受容体タンパク质は、细胞外のシグナル分子を结合した时だけ细胞内へ情报を伝えますが、それぞれの情报伝达分子机构はまだ十分に解明できていません。

今回、本研究グループは、血液循环において局所的な血流の调节を行っている血管収缩因子エンドセリンが细胞膜にあるエンドセリン叠型受容体に结合している复合体の构造と、何も结合していない状态のエンドセリン叠型受容体の构造を原子レベルで解明しました。

これらの构造解析により、エンドセリンペプチドが受容体タンパク质にすっぽりとはまり込み、末端部分は受容体内部に潜り込んでしっかりと繋ぎ止められている様子が明らかになりました。また、エンドセリンと受容体は、多くの相互作用を形成することで高い亲和性を得ていることが明らかになりました。さらに、何も结合していない受容体构造と比较すると、エンドセリンの结合に伴い、受容体の结合部位周辺がエンドセリンにフィットするように、よりコンパクトな构造に変化していることが明らかとなりました。

これらの构造情报は、エンドセリンによる情报伝达の分子机构の理解を深めるとともに、立体构造を基盘とした高血圧症、がん、アルツハイマー病などに作用する副作用の少ない新たな薬剤の开発を促进すると考えられます。

エンドセリンが受容体(青)と结合している复合体构造

详しい研究内容について

书誌情报

【顿翱滨】


Wataru Shihoya, Tomohiro Nishizawa, Akiko Okuta, Kazutoshi Tani, Naoshi Dohmae, Yoshinori Fujiyoshi, Osamu Nureki & Tomoko Doi. (2016). Activation mechanism of endothelin ETB receptor by endothelin-1. Nature.

  • 京都新聞(9月6日 25面)、産経新聞(9月10日 25面)に掲載されました。