田中功 工学研究科教授、張雨橋 北海道大学博士後期課程学生、太田裕道 同教授、幾原雄一 東京大学教授、Yu-Miin Sheu 台湾?国立交通大学助教らの研究グループは、熱を電気に変換する熱電材料の性能が、狭い空間に電子を閉じ込めることで、従来比の2倍に増強できることを世界で初めて実証しました。
本研究成果は、2018年6月20日に英国の科学誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
日常的に使われるエネルギーのうち、およそ3分の2は、活用されないまま廃热として环境に放出されています。この廃热を有効活用するために、热を电気エネルギーに直接変换できる热电材料の利用が注目されています。本研究は、物性理论に基づいた指针に基づき、狭い空间に电子を闭じ込めることで、热电材料の性能が従来比2倍に増强できることを、初めて実証したものです。
北海道大学电子科学研究所の太田裕道教授が研究を主导し、私たちは量子力学计算による电子状态解析に贡献しました。このような合理的な设计指针をもとにした新材料开発は、今后さらに加速すると期待しています。
概要
热电材料は、温度差を与えると発电し(ゼーベック効果)、逆に电気を流すと冷える(ペルチェ効果)性质を示すことから、利用されることなく捨てられている廃热の再资源化で注目されています。廃热を効率よく电気に変换するためには、电気を通しやすく、温度差を与えた时に発生する电圧が大きく、热を通しにくい、性能の优れた热电材料が必要ですが、导电率と电圧(热电能)の间のトレード?オフ関係が障害となり、性能向上が进んでいません。
この解决方法として、「狭い空间に电子を闭じ込めると、导电率を変えずに热电能を高められる」という理论が1993年に提案されました。この理论は、电気を通す极薄层を电気を通さない层で挟み込んだ人工超格子を用いて実証され、バルク比约5倍の热电能増强が达成されましたが、人工超格子全体の性能としては、バルク(个体の表面や界面以外の部分)の最大値とほとんど変わらないという问题がありました。
この问题を解决するため、本研究グループは、2016年に新たに提案された理论「大きく広がった电子を狭い空间に闭じ込めることで、より大きな热电能増强が起こる」の実証に取り组みました。具体的には、従来よりも约30%大きく広がった电子を人工超格子に闭じ込めた结果、バルク比约10倍の热电能増强を达成し、人工超格子全体の性能を従来比2倍に高めることに成功しました。
広がった电子を狭い空间に闭じ込めることで、热电能の増强効果を高め、性能を倍増させるという今回の成果は画期的であり、将来、工场、火力発电所、自动车やコンピュータなどからの廃热を电気に変えて有効利用する技术につながることが期待されます。

図:本研究のイメージ図
详しい研究内容について
书誌情报
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【书誌情报】
Yuqiao Zhang, Bin Feng, Hiroyuki Hayashi, Cheng-Ping Chang, Yu-Miin Sheu, Isao Tanaka, Yuichi Ikuhara, Hiromichi Ohta (2018). Double thermoelectric power factor of a 2D electron system. Nature Communications, 9, 2224.