数学と実験の融合研究でC型肝炎ウイルスの感染戦略を解明 -ウイルスは、インドア派かアウトドア派か-

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岩見真吾 高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)連携研究者(九州大学准教授)、 岩波翔也 九州大学博士課程学生は、渡士幸一 国立感染症研究所主任研究官らと共同で、C型肝炎ウイルス(HCV)が持つ繁栄戦略の一端を解き明かすことに成功しました。

一般に、ウイルスは感染した细胞内で自身を复製するとともに、子孙粒子となって新たな细胞に感染し増加します。つまり、ウイルスは「中に引きこもって、同一细胞内で安全に子孙を复製する」か「粒子として危険を冒して外出し、别の细胞に感染し増殖する」かの2つの戦略をもつと考えられます。しかし、细胞内?外のウイルス生活环を统一的に记述する実用的な方程式がなく、このような戦略を「数値化」する术がなかったことより、ウイルス繁栄戦略の観点からは、これまで研究がなされてきませんでした。

本研究グループは、代表的な2つの贬颁痴株を例にして感染実験を実施し、得られた実験データをもとに、ウイルス生活环を数学的に表した方程式を用いて解析しました。これにより、生活环の中でウイルス粒子放出が占める比率が2つの贬颁痴株间で2.7倍も开きがあり、「インドアウイルス」と「アウトドアウイルス」のような个性があること、前者は「増えやすさ」を示す指标の値が、后者は「伝播しやすさ」を示す指标の値が、それぞれの指标の最大となる値に近い値をとることがわかりました。このように、数学と実験を合わせたデータ分析から、ウイルスが异なる繁栄戦略を使い分けて生存していることを解明しました。

今回明らかにした2つの繁栄戦略は、持続感染するその他のウイルスにも共通している可能性があります。また、繁栄戦略を解明する研究により、ウイルスの弱点を见つけられるため、体内でのウイルス感染を制御する治疗法の确立を目指します。

本研究成果は、2020年7月31日に、国際学術雑誌「PLOS Biology」に掲載されました。

図:感染细胞内の颁型肝炎ウイルスゲノムの二つの运命

详しい研究内容について

书誌情报

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Shoya Iwanami, Kosaku Kitagawa, Hirofumi Ohashi, Yusuke Asai, Kaho Shionoya, Wakana Saso, Kazane Nishioka, Hisashi Inaba, Shinji Nakaoka, Takaji Wakita, Odo Diekmann, Shingo Iwami, Koichi Watashi (2020). Should a viral genome stay in the host cell or leave? A quantitative dynamics study of how hepatitis C virus deals with this dilemma. PLOS Biology, 18(7):e3000562.